[二月の勝者] エンタメ×塾の日常
2月に入り中学、高校、大学とそれぞれの受験日程のピークを迎えました。その中でも、コロナ禍に関わらず首都圏受験者数5万人を超える中学受験についておすすめのマンガを紹介します。高瀬志帆さん作の「二月の勝者」です。昨年秋にドラマ化もされているので、俳優キャスティングも楽しみながら観たい方はドラマ版もおすすめします。あくまでもエンターテイメントの作品なので、誇張されていると感じる部分もありますが、受験指導の場面や、講師の日常風景などはけっこうあるあるの描写がされており、私も思わず観入ってしまいました。
大まかな内容としては、都内中学受験塾の中堅校舎に就職した主人公の新米講師と、中学受験塾最高実績を保持する大手塾から主人公の中堅校舎へ転職してきた伝説の講師の視点を交えながら進んでいきます。その間、個性的な受験生とその保護者たち、ライバル校の講師などが登場することでストーリーに起伏を持たせています。特に、生徒の行動描写はリアルで、志望校選びを友達の雰囲気に流されてしまったり、怒られないためにカンニングをしてしまったりと、実際の教育現場でも起こりがちな出来事です。また、主人公を含めた講師陣の描写もよく描かれているなと感じました。深夜のファミレスで過去問を解いていたり、食生活が乱れていたり、あるあると感じ入ってしまいました。この作品が素晴らしいと思う点は、実際の受験でも生きるアドバイスや指導法がきちんと描かれている点です。たとえば、偏差値の話。偏差値50=平均だよねと、一般の方は理解していると思います。しかし、中学受験でいう偏差値50は高校受験や大学受験の偏差値50とは意味合いが違うと作中の会話で出てきます。中学入試を受ける母体数の小学生は全小学生の中の上位20%で、その上位20%の中の平均というのは、ほぼ全員が受験する高校入試や大学入試の平均と比べて相当難しいという指摘です。初めて首都圏模試や全小統一テストなどを受験されて、偏差値50に届かなかったり、学校ではトップクラスなのに偏差値60を取れなくてがっかりする生徒がいますが、対策なしの初めての模試での偏差値50前後は上出来なのです。逆に、初めての模試で偏差値55以上であれば、地域の難関校を受験する下地ができていると評価できます。
以上、2月の勝者の大まかな説明と面白い点を紹介しましたが、改めてエンターテイメント要素と塾のリアリティーを感じる内容で、保護者の方にも塾講師の方にもおすすめします。
2022年02月02日 16:18