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☆研究学園校ブログ☆

[4000週間] 生産性の罠

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[4000週間] 生産性の罠

 タイトルに記した4000週間とは、人間が80歳まで生きた時の期間を表しています。120歳まで生きたとして6400週間です。今の自分の年齢とこの期間を見比べると、意外に残りの時間が限られていることに気づきます。「限りある時間の使い方」(オリバー・バークマン著)は、よくある生産性アップや効率化、デジタルタスキングの盲点を指摘し、新しい角度からの時間術を提案しています。

 現代を生きる私たちの社会では、より発展すること、変革すること、前進することが当然のようになっています。ほめる教育指導...、360度の人事評価...、コーチング...、セラピー...といった制度や技術も現代になって隆盛しています。さらにはライフコーチ、ライフスタイルコンサルタント、セラピストとキリがありません。コーチングにしろセミナーにしろ、その種類だけ生き方が多様であっていいということの表れではないでしょうか。誰にも叩かれない正しい生き方、働き方なんてないんだと気づかされます。本作品では、内面にフォーカスし過ぎる現代人に警鐘を鳴らし、まずは社会とのつながりの中の自分−家族の中の自分、友人にとっての自分、コミュニティの中での自分−にまず目を向けてみよと説きます。時間をコスパ化するのではなく、有限の時間をまず受け入れるのです。有意義に時間を使えたと感じる時間は、コスパで捻出したわずかな時間ではなく、友人や家族のために使った時間、自分の好きなことに費やした時間であると感じるかもしれません。

 
本作品の後半では、何もしない本当の余暇と、平凡な趣味を持つことを勧めています。初めから短いと決まっている人生だからこそ、慌ただしく過ごす週末ではなく、ただ休むための余暇を味わう。将来のためになるからではなく、ただ好きというだけで行う趣味を持つ。その時間はそれしかしないと決めることで諦めとゆとりが生まれ、忙しさの悪循環を断ち切ることができるのです。平成までのひたすら効率を追求する時間術・ビジネススキル系の本とは違った視点を取り入れるのにオススメの一冊です。
2022年08月27日 17:06

[ミッドナイトライブラリー] 人生をやり直してみたら...

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[ミッドナイトライブラリー] 人生をやり直してみたら...

 生死のはざまに意識の中に現れた真夜中の図書館。ここには自分の人生に関するあらゆる過去の記録と、選ばなかった人生のあらゆる選択肢が収蔵されています。恋人とも別れ、仕事もクビになった主人公ノーラ。自らの人生を断ち切ろうとしたその時、ノーラの中に真夜中の図書館が姿を現します。今まで選ばなかった人生のあらゆる可能性を試してみた結果、ノーラがたどり着いた結論とは。今回は海外小説から「ミッドナイト・ライブラリー」(マット・ヘイグ著)をご紹介します。

 真夜中の図書館でノーラが最初に目にしたのは分厚い「後悔の書」。今までの人生の中の様々な後悔、行動しなかったことが書かれています。ノーラはこれらの中から、行動する選択肢、子どもの頃望んでいた人生のルートの選択肢をいくつか追体験してみます。選ばなかった人生の追体験をする中で、ごく小さな決定や行動が周囲の人々や自分の環境に大きな変化を及ぼすということに気づきます。父親の薦めるスポーツでオリンピックまで登り詰めるも、家族関係や精神状態は理想とはかけ離れていたり。趣味だったバンド活動を続けてメジャーデビューまで果たすも、現実の自分が思っていた幸福はつかめていなかったり。選びうる成功、好きな自分を追体験してみても納得できる人生が見つかりません。そして、心から納得しない限り、真夜中の図書館から抜け出すこともできません。理想の人生を探すのに疲れ果てたノーラも、図書館からいよいよ決断を迫られます。成功した自分、恵まれた家庭を築いた自分、平凡な自分...ノーラはついに意を決して図書館を去ることに。

 どんな人でも戻ってみたい人生の瞬間、決断の瞬間、進路、仕事があると思います。あちらを選んでいればきっと成功していた、あの会社で働いていたら今ごろこうなっていたなど、選択し直したい人生は誰にでもあるはずです。過去の選択を選び直す権利を与えられた主人公ノーラは、私たちのそんな希望を身をもって体験してくれます。そして、どう感じ、どう周りの環境が変化するのかも読者に示してくれます。文章全体を通して伝わってくるのは、完璧な人生は用意されていない、全員から素敵だと認められる人生はどこを探しても見つからないということです。また、人生はトレードオフということです。理想とする自己実現と夢を実現した結果、家族は切り捨てる結果となるかもしれません。理想の人間関係に囲まれた結果、都会とは離れた町で静かな暮らしを送ることになるかもしれません。400ページ超の長編小説ですが、人生の「もしも」を思い通りに体験するというわくわくする感覚は、その長さを全く感じさせません。時間の取りやすい夏休みの間におすすめの一冊です。
2022年08月11日 12:11

[ななみの海] いい大人になりたい

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[ななみの海] いい大人になりたい

 
本日は国語の入試問題への出題も多い朝比奈あすかさんの最新作「ななみの海」(双葉社)をご紹介します。朝比奈さんの作品は会話の部分と情景描写の部分とのバランスが絶妙で、よどみなく読み進められる点が特徴です。登場人物の心情の動きが読み取りやすいことが、入試問題として取り上げられやすい要因の一つではないかと思います。

 主人公の岡部ななみは児童養護施設に中学1年生のころから暮らす高校2年生。部活動や学校生活も充実させながら、「施設の子」だから馬鹿にされちゃいけないという強い思いから医学部を目指すことになるのですが...。ななみは施設内でも学校でも問題を起こすことなく、バランスのよい人間関係を維持しています。自分の感情をコントロールし、大人の対応を早くから身につけています。しかし、表の人間関係を上手く回すことができていても、自分の心の言い知れぬ不安や、施設で暮らすことになったことへの不満は抑え切れません。ときに施設の子どもたちやそこで働く職員を突き離した目でとらえたり、どこまでいっても他人であることによる距離感の取り方に、ななみの気持ちは揺れ動きます。大人の事情で惨めな思いや、かわいそうな子どもを生み出したくない。自分は絶対にそうならない。そうしてもがきながらも、ななみ自身の人間的成長が、他の施設の子どもたちや友人たちの変化と共に語り進められていきます。

 10代の多感な時期の心情や行動の深層を実によく表した作品です。児童養護施設という環境にいる自分は、周りと同じではないと鬱屈した気持ちに何度もななみは陥ります。しかし、ななみから見たら普通の「家の子」の友人たちにもそれぞれ隠したい家庭事情、家族関係があるのだと徐々に気付いていきます。迷ったり葛藤しつつも努力して大人への一歩を踏み出すななみの成長は、今を生きる中高生にオススメの内容です。
2022年07月20日 14:03

[好奇心] 子どもは40000回質問する

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[好奇心] 子どもは40000回質問する

 出版印刷物やインターネットの普及で、情報や知識は誰でもすぐに手に入るようになりました。世界中のどこにいても、ウクライナ情勢やお気に入りのアーティストの最新情報を入手することができます。情報格差は縮まっていると言えそうです。一方で、何でも分かる環境にいるせいで、逆に自ら物事に関心を寄せたり調べようとしない好奇心格差と呼ばれる状況がじわじわと広がっています。今回ご紹介する「子どもは40000回質問する」(イアン・レズリー著)は、現代人が好奇心を意図的に選択する生き方を提案しています。

 本作では好奇心をさらに細かく分類しています。子どものころから見られる何でも知りたい、触りたいといった原初的な好奇心を「拡散的好奇心」と呼んでいます。この好奇心は表面的な性質を持ち、目新しいものであれば何でも魅力的に見え、次々と興味の対象を変えやすいという特徴を持ちます。大人にとってのニュースサイトザッピングやSNSのフィードチェックもこの拡散的好奇心に該当します。次々と興味の対象を切り替えてしまうという性質上、拡散的好奇心だけでは慌ただしい認知作業が繰り返されるだけで、情報の練り上げや知識の深い結合には至りません。

 生まれながれにして備えている拡散的好奇心はときに注意散漫の様に映ります。しかし一方で、この拡散的好奇心が正しい方向に突き進むと、より深い知識と理解を求める「知的好奇心」へと成長していきます。研究者や専門職を極める者たちが備えている好奇心はここに分類されます。子どもに当てはめて考えてみると、幼児期の子どもの質問は「何」「どこ」といった拡散的好奇心よりの質問から、「どうして」「なぜ」という知的好奇心よりの質問へと成長していきます。およそ2歳~5歳の間にこのような理由、説明に関する質問を子どもは約40000回問いかけると言われています。個人差はありますが、幼児期の質問や問いかけを無視したり的外れな回答をしていると、子どもは質問しないように負の学習をしてしまいます。興味のフックとなる知識や情報の断片を適切なタイミングで提供できなければ、拡散的好奇心を知的好奇心へ発展させることは難しいでしょう。

 3つ目の分類は「共感的好奇心」と呼ばれ、人がどう感じているか知りたい、自分をどう思っているか把握したいといった感情にまつわる好奇心です。この好奇心も人間ゆえの高度な認知能力で、ゴシップ雑誌や交流系のSNSが盛んな理由もこの共感的好奇心から説明できます。拡散的好奇心と同様、通常は人間の成長と共に自然に身に付いてくるものですが、成長過程において感情面でのフィードバックや他者の心情の観察をする機会が極端に少ないと共感的好奇心が乏しいまま成長してしまいます。本作品では、絵本の読み聞かせ、物語系の読書経験が推奨されています。

 ICTが発達した現代では、好奇心を持った瞬間にはすぐに情報検索が行えます。関心と回答への反応スピードが速いことは素晴らしいですが、人間の脳にとっては全てが吉と出るわけではなさそうです。知識の習得や学習においては、そこにたどり着く際に適度な摩擦や不確実性がある方が理解と想像を深めます。ときには簡単に答えが見つからない課題に取り組むことが、興味のフックや探究心を育んでくれます。これは「望ましい困難」と呼ばれ、少し苦労して学んだ方が深く理解し、忘れないという認知科学上の理論です。タブレット学習やAIを使ったスマートな学習を活用しつつも、義務教育の段階においては手書きや紙の辞書を引いてみる、自分で試行錯誤してみるといった取り組みが大切なのかもしれません。
 
2022年06月25日 12:38

[依存症対策] irresistible

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[依存症対策] irresistible

 塾の面談時の悩みで多いのが、子どもがスマホばかり見ている、ゲームばかりしている、勉強しないといった悩みです。ゲームの媒体や機種は時代ごとに変わりこそするものの、こうした悩みは毎年必ずあります。むしろ、ある方が普通と言ってもいいぐらいです。これらの悩みを解消するために塾に通わせる、自習室に来させるという動きにつながるのもまた事実なので、塾の果たす場所的役割の一つであると思います。本作品「僕らはそれに抵抗できない」は行動経済学者による依存症の仕組みとその脱却方法を探っています。

 依存症が病気なのか、それとも社会現象の一つなのかは専門家の間でも判断が分かれるそうです。治療法に関しても、投薬治療のほか、薬を使用しないカウンセリング、置き換え療法、行動療法、合宿プログラムなどアプローチ方法は何種類かあります。本作品で紹介される事例では、重度のゲーム依存や薬物依存が取り上げられていますが、行動経済学的、心理学的アプローチによる効果的な脱却方法が記されています。例えば、スマホやタブレットを視聴しすぎてしまうという問題に対しては、2つのアプローチ方法が紹介されています。一つは、「行動アーキテクチャー」という方法で、生活環境や生活場面から対象物を物理的に遠ざけるという手法です。人間の脳はとても優秀で、スマホやタブレットが視界に入る場所にあるだけで、そちらに脳のメモリが割かれていきます。そして、ふと集中力が途切れた瞬間には手に取っているという行動を繰り返してしまいます。ですので、リビングや子どものデスクの上からはスマホやタブレットを視界外に置くことが有効です。そして、スマホやタブレットをいちいち取り出す、探すといった障壁を意図的に設けることも有効です。
 もう一つのアプローチは「習慣の置き換え」です。人間の行動が習慣化してしまっている場合、そこには合図、行動、報酬という3つの場面があります。この内、依存してしまっている「行動」(スマホ、ゲーム)の部分を別の動作に置き換えるのです。例えば、夕食の後にいつもスマホやゲームをしているのであれば、食後が合図となっているので、食後の後にペットの散歩や宿題時間、部屋の掃除といった「行動」を組み入れます。急に置き換えることが難しければ、一部割り込ませるだけでも構いません。上手くいけば、食後はまず宿題やワークをやるものだと習慣化される可能性があります。

 いずれの方法にしても、無理やり何かを辞めさせたり、強制的な手段ではない点に着目して頂きたいと思います。依存してしまう脳や行動から働きかけなければ、人間はすぐに抜け道を探したり別の手段に訴えるようになるだけです。脳の傾向を上手く活用する、生活動線から依存対象物をフェイドアウトさせるなどの手段が好ましくない習慣からの脱却方法となり得ます。
2022年06月03日 15:23

[最新脳理論] ー1000の脳理論ー

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[最新脳理論] ー1000の脳理論ー

 
脳科学に関する研究は日進月歩です。しかし、脳内の知能がどう起こっているかについてはいまだ謎なのです。今回は、大脳の中で知識・知能を司る大脳新皮質の最新理論を「脳は世界をどう見ているのか」(ジェフ・ホーキンス著)からご紹介します。300ページ超の専門的内容となりますが、その中から勉強や学習に活かせるテーマを選びました。
 まず、これまでの脳科学で明らかにされている脳の特性から復習すると、私たちの脳は可塑性が大いにあります(柔軟性があるということ)。だからこそ、何歳になっても新たな知識を学んだり、スキルを磨き上げることが可能なのです。ただ、脳がどのように物事を理解し、覚え、利用できるようになるかの枠組みがいまだに不明なのです。本作では、脳の新皮質の学習する枠組みを「1000の脳理論」という説で解き明かそうとしています。かいつまんで述べると、新皮質は五感から得た情報を「座標系」(パターン、モデル、枠組み)で認識します。目に見える物体でも、目に見えない概念や言語も全てこの座標系という独自の認識パターンに当てはめて理解します。もちろん、この認識するプロセスは無意識下で常に行われています。私たちは目新しいものやよく知らない場所をよく観察したり、体験したりしようとします。それは、まだ知らない情報に当てはめる座標系を割り当てる作業を無意識下にしている反応なのです。では、十分見慣れた情報についてはどうなるのか。当然認識スピードと反応が速くなりますし、より細部の情報を理解できる様になります。そしてこれこそが、あらゆる物事に対する唯一の学習プロセスなのです。つまり、英語や算数が苦手と言っている人は、英文法や方程式の座標系がつかめておらず、英語や算数を認識するトレーニング量と習熟が不足しているというだけなのです。

 なんだ結局勉強は学習量に比例するのかと思われるかもしれませんが、それが真実です。逆に言えば、一度大脳新皮質内で座標系が確立されれば、その分野に関する神経細胞の結び付きが強化され、それに関連した情報の伝達スピードが上がります。英文法が得意な子は長文読解も速く、算数が好きな子は計算も速いのも納得です。上記で述べた通り、この学習プロセスは勉強以外のスキル習得、スポーツ、あらゆる物事に汎用性があります。この新皮質の汎用性は現在のAI(人工知能)も持ち合わせていない人間特有の知性です。まさに人間を人間たらしめている特性の一つかもしれません。本作品で最新の脳理論を知ることができますが、それ以上に、勉強もやればやっただけ必ず向上するという根拠を得られたことが大きいです。今は勉強が苦手でも、脳がきちんと認識するまでトレーニングすることで、成績は伸ばせるんだよと伝えられそうです。
2022年05月16日 14:20

[超習慣力] 強い意志はやっぱり不要だった

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[超習慣力] 強い意志はやっぱり不要だった

 
今回は習慣とは何か、そして習慣はどう作られるかについての良書「超習慣力」(ウェンディ・ウッド著)をご紹介します。受験勉強から普段の学習にまで活かせる内容が多く、ゴールデンウィーク期間に一気読みしてしまいました。

 本書では習慣の事を「状況がもたらす合図とその状況から生まれる報酬のための行動の繰り返し」と定義づけています。歯磨きを例に取ると、起床時や就寝時が歯ブラシを取る合図となります。そして歯を磨くと口内が清潔に保たれるという報酬があります。この一連の行動を小さい頃から何度も繰り返しているから多くの人の習慣となっているわけです。ところで、今挙げた歯磨きや普段行っている日常のルーティーンに、強い意志や目標設定などが必要だったでしょうか。何となく続いている、そうするのが自然な流れだからやっているというのが実際のところではないでしょうか。本書ではダイエットや筋トレ、食習慣といった誰もが習慣化を目指す代表例から、意志の力や行動力に頼らない方法を探っています。

 とりわけ重要だと感じたのが「状況設定」です。習慣化しやすい環境を作ることとも言い換えられます。ランニングを例に取ると、上手く習慣化されているランナーは走りに出かけるまでの摩擦が少ないという特徴があります。シューズやウェアが用意されている、走るコースが決まっている、走る時間帯が決まっているなどの状況が設定されており、仕事終わりや食後のタイミングが合図となって気づいたら走り出しているというのが習慣化されているランナーです。一方で、ジムの会費まで払ったのにランニングが続かないという場合、お金を払ったというだけでは状況設定が曖昧で、繰り返し走る合図が形成されていないということになります。

 上記で定義づけられた習慣の力は、あらゆる分野に応用が効きます。受験勉強で考えても、一見強い意志と行動目標が全ての様に思われますが、まず整えるべきは状況設定です。塾・予備校という場所を勉強の合図として使う、塾に通わないのであれば特定の時間は机の上でテキストを広げている状況を作ることから始めるのです。このとき、状況設定を妨げるスマホ、ネット動画、ゲームという存在は「摩擦」となり、習慣化を妨げます。摩擦を取り去るのにも意志や目標は必要ありません。摩擦は無いに越したことはありませんから、勉強をし始めるタイミングで手元にない、視界に入らない、触れていない状況を作りさえすればよいのです。勉強ができる子は意志力が強いに違いないと想像しがちですが、正しくは勉強ができる子は「勉強する状況設定(環境)の中にいる」ということになります。こうした勉強の合図が入りやすい環境を普段の生活にいかに組み込むかが、少なくとも義務教育段階の子どもたちには重要なターニングポイントとなります。学校や家庭内で「状況設定」が難しい時のために、塾や予備校が存在していると言っても過言ではありません。自らの責任で時間管理や行動管理ができる様になる年齢までは、先手を打って習慣化の仕掛けを生活に取り入れる必要があります。
 
2022年05月06日 15:33

[英語学習] 同時通訳者

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[英語学習] 同時通訳者

 
日本には英語学習の教材や方法論が数多くありますが、語学を極めた同時通訳者はどの様に英語を学習したのか。そしてどのようなモチベーションを持って英語学習を続けたのか。「不登校の女子高生が日本トップクラスの同時通訳者になれた理由」(著・田中慶子)には英語を学ぶ日本人に対する温かいメッセージが込められています。

 日本の学校生活に馴染めず、不登校、フリーターを経て半ば逃げる様にしてアメリカへホームステイ留学した田中氏。当初とくに得意ではなかった英語に囲まれた生活、膨大な量の大学からのレポート課題にも必死に喰らいついて卒業をします。膨大な量の英文を読みこなすために工夫した速読法が、各段落の冒頭と最終結論をメインに読解するという方法でした。これはパラグラフリーディングと呼ばれる読解手法の一つで、塾や予備校でもしばしば指導されるスキルです。これを留学中に自然と身につけたということです。華やかな印象のアメリカとは少し違った留学生活だった様ですが、ここでの語学の自信を元に、日本へ帰国後はいくつかの外資系会社、NPO法人勤務を経て同時通訳者のポジションを得るに至りました。

 留学先のアメリカ最古の名門女子大マウント・ホリョーク(1837年創立・Mount Holyoke College)で、創設者のGo where no one else will go. Do what no one else will do.(他の誰も行かない場所に行き、他の誰もやらないことをやりなさい) という言葉は、日本の教育や社会に馴染めなかった自分でも、みんなと同じでなくてもよい、できる事を開拓していく人生もいいものだと田中氏を勇気づけます。その後、成り方も分からなかった同時通訳者という職を得るために、「顔が筋肉痛になった」ほど必死の発音と聞き取りのトレーニングに励みます。プロの同時通訳者となってからも、言葉と表現の学習に終わりはないと言います。曰く、「exciting」と「comunity」にピッタリ一致する日本語はいまだに見つからないと語っています。

 本作には留学中の話はもちろん、英語学習についてヒントとなるお話が随所に登場します。しかし、私たちが想像していた様なスペシャルな学習方法は見受けられず、ごく単純な聞き取りの繰り返しや発音練習の繰り返しでした。また、モチベーションは他者から与えられるよりも、内から湧き出るような興味や短期目標(留学、テストスコア)の方が大きく人を動かすことも読み取れました。受験やテストを短期目標の一つとして意識し、内なるモチベーションを呼び起こして頑張っていきましょう。
2022年04月30日 17:11

[中高一貫校] 週刊ダイヤモンド

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[中高一貫校] 週刊ダイヤモンド

 今年も「週刊ダイヤモンド」から中高一貫校、塾特集号が発売されました。具体的な学校名や塾名が登場する号ですので、ビジネスパーソン以外の保護者の方や、子育て中の方も気になる特集ではないでしょうか。隅から隅まで読むのは私たち塾講師に任せるとして、ここでは一読をお勧めしたい内容をご紹介したいと思います。

 最新受験トレンド分析や偏差値ランキングは例年似通った内容なので、実際に来年受験を考えている方以外は軽く見るだけでも十分だと思います。今回新たに特集の前半で「都立校の入試倍率が急降下」という見出しページがありますが、これは茨城県から中高一貫校を目指す方も参考になる分析がなされています。都立校受験者にとって、都立校の適性検査の難易度がここ数年である程度知れ渡り、受験倍率が落ち着き始めたのではないかというのが一点。都立受験を途中から方針転換したグループの受け皿として、私立中高一貫校が適性検査型入試を設定し出したことが、結果的に都立校の受験倍率を押し下げたのではないかというのがもう一点です。同じことは茨城県にも言えて、一昔前の異常な倍率は落ち着き、現在は水戸一校附属中の4.94倍を筆頭に並木中等3.76倍、水海道一附属中3.88倍と、おおむね4倍〜3倍前後といったところが多いです。また、県内の常総学院や土浦日大といった私立校も適性検査型入試を用意していることから、規模は違えど都立と同じ現象が見られています。

 特集中ほどに行くと、中高一貫校入学後から卒業時の難関大合格実績をもとに弾き出されたレバレッジ度ランキングがあります。都立最難関の小石川中等や立川国際中等、関西の難関校白陵や西大和学園を抑えて並木中等が1位を獲得しています。入学時の難しさに比して難関大合格実績が高いということを表し、6年間の教育内容が優れているとデータから分かります。ただし、難関大への合格者数のランキングではないため、数の多さでいうと他校に及びませんが、在学中の学力の伸びが確かであることが読み取れます。

 今年の特集号では以上の様な中高一貫校の受験トレンドが読み取れました。あえて言うまでもありませんが、関東・関西ともに中学受験率は右肩上がりで、首都圏においては5人に1人が受験をする状況です。受験が特別な事ではなくなりつつあるからこそ、志望校選択や受験戦略を日頃から意識して学習、進路指導に臨むことが大切です。

「週刊ダイヤモンド4月23日号」目次: https://www.diamond.co.jp/magazine/20244042322.html
 
2022年04月23日 16:59

[中高一貫校] 中学受験

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[中高一貫校] 中学受験

 今回は中学受験の舞台裏を追いかけた「中学受験」(横田増生著)をご紹介します。一般的な受験情報誌や記事が中学受験のメリット面ばかりを報道しているのに対し、本作では中学受験をする上での経済面、私立学校の経営面、合格・不合格者の声をバランス良く拾っています。初版が2013年ということで、情報の鮮度としてはやや劣りますが、中学受験の本質的側面は上手く捉えている作品となっています。

 中学受験といえば私立中学ばかりを思い浮かべがちですが、本作では台頭してきた公立中高一貫校もクローズアップしており、都立最初の中高一貫校である白鴎高校附属中学校を取り上げています。白鴎高校附属中の第一期卒業生は、東大5名、一橋大2名、早慶上智66名など、公立中高一貫校のポテンシャルの高さを教育業界に見せつけました(白鴎サプライズ、白鴎ショック)。白鴎附属中はその後も東大合格者を輩出しており、偏差値は60前後となっています。もちろん公立中高一貫校は倍率が高くなりがちですが、大学合格実績という出口の伸びを見る限り、中学受験のコストパフォーマンスは私立中学より高い場合が多々あります。ここ茨城県でも公立中高一貫校の新設が相次いでおり、水戸一高附属、土浦一高附属、並木中等に関していえば入学から卒業後のコストパフォーマンスとしては私立を上回っていると思います(並木中等2021年度東大9名、京大5名、東北大10名、筑波大25名)。

 また、塾業界の奮闘と私立中学校との共存共栄関係も垣間見る事ができます。塾講師を学校内の演習講座に招いている学校や、指導ノウハウを伝達・連携しながら大学進学実績を支えている学校など様々です。塾・予備校不要を掲げる学校は、こうした手厚い教科指導に少なからず外部講師の力やICT学習を取り入れています。逆に、受験指導は特段に行わないという姿勢の中高一貫校に通った場合、大学受験に備えては半数以上の生徒が塾や予備校に通っている現実も見えてきます。

 本作品が刊行されてから10年近い年月が経っていますが、大方中学受験の本質に変化は起こっていないように思います。当時との違いでいえば、公立中高一貫校の実力がある程度認知されてきたことと、中学入試の科目や制度が一層細分化し、受験者数自体は増加傾向にあるという事です。今後も英語入試やプログラミング入試などが増加するのは明らかですので、教育業界の流れと受験する際の勝負科目などを余裕を持って検討する必要がありそうです。
2022年04月19日 17:43
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