[最新脳理論] ー1000の脳理論ー
脳科学に関する研究は日進月歩です。しかし、脳内の知能がどう起こっているかについてはいまだ謎なのです。今回は、大脳の中で知識・知能を司る大脳新皮質の最新理論を「脳は世界をどう見ているのか」(ジェフ・ホーキンス著)からご紹介します。300ページ超の専門的内容となりますが、その中から勉強や学習に活かせるテーマを選びました。
まず、これまでの脳科学で明らかにされている脳の特性から復習すると、私たちの脳は可塑性が大いにあります(柔軟性があるということ)。だからこそ、何歳になっても新たな知識を学んだり、スキルを磨き上げることが可能なのです。ただ、脳がどのように物事を理解し、覚え、利用できるようになるかの枠組みがいまだに不明なのです。本作では、脳の新皮質の学習する枠組みを「1000の脳理論」という説で解き明かそうとしています。かいつまんで述べると、新皮質は五感から得た情報を「座標系」(パターン、モデル、枠組み)で認識します。目に見える物体でも、目に見えない概念や言語も全てこの座標系という独自の認識パターンに当てはめて理解します。もちろん、この認識するプロセスは無意識下で常に行われています。私たちは目新しいものやよく知らない場所をよく観察したり、体験したりしようとします。それは、まだ知らない情報に当てはめる座標系を割り当てる作業を無意識下にしている反応なのです。では、十分見慣れた情報についてはどうなるのか。当然認識スピードと反応が速くなりますし、より細部の情報を理解できる様になります。そしてこれこそが、あらゆる物事に対する唯一の学習プロセスなのです。つまり、英語や算数が苦手と言っている人は、英文法や方程式の座標系がつかめておらず、英語や算数を認識するトレーニング量と習熟が不足しているというだけなのです。
なんだ結局勉強は学習量に比例するのかと思われるかもしれませんが、それが真実です。逆に言えば、一度大脳新皮質内で座標系が確立されれば、その分野に関する神経細胞の結び付きが強化され、それに関連した情報の伝達スピードが上がります。英文法が得意な子は長文読解も速く、算数が好きな子は計算も速いのも納得です。上記で述べた通り、この学習プロセスは勉強以外のスキル習得、スポーツ、あらゆる物事に汎用性があります。この新皮質の汎用性は現在のAI(人工知能)も持ち合わせていない人間特有の知性です。まさに人間を人間たらしめている特性の一つかもしれません。本作品で最新の脳理論を知ることができますが、それ以上に、勉強もやればやっただけ必ず向上するという根拠を得られたことが大きいです。今は勉強が苦手でも、脳がきちんと認識するまでトレーニングすることで、成績は伸ばせるんだよと伝えられそうです。
2022年05月16日 14:20