[英語学習] 同時通訳者
日本には英語学習の教材や方法論が数多くありますが、語学を極めた同時通訳者はどの様に英語を学習したのか。そしてどのようなモチベーションを持って英語学習を続けたのか。「不登校の女子高生が日本トップクラスの同時通訳者になれた理由」(著・田中慶子)には英語を学ぶ日本人に対する温かいメッセージが込められています。
日本の学校生活に馴染めず、不登校、フリーターを経て半ば逃げる様にしてアメリカへホームステイ留学した田中氏。当初とくに得意ではなかった英語に囲まれた生活、膨大な量の大学からのレポート課題にも必死に喰らいついて卒業をします。膨大な量の英文を読みこなすために工夫した速読法が、各段落の冒頭と最終結論をメインに読解するという方法でした。これはパラグラフリーディングと呼ばれる読解手法の一つで、塾や予備校でもしばしば指導されるスキルです。これを留学中に自然と身につけたということです。華やかな印象のアメリカとは少し違った留学生活だった様ですが、ここでの語学の自信を元に、日本へ帰国後はいくつかの外資系会社、NPO法人勤務を経て同時通訳者のポジションを得るに至りました。
留学先のアメリカ最古の名門女子大マウント・ホリョーク(1837年創立・Mount Holyoke College)で、創設者のGo where no one else will go. Do what no one else will do.(他の誰も行かない場所に行き、他の誰もやらないことをやりなさい) という言葉は、日本の教育や社会に馴染めなかった自分でも、みんなと同じでなくてもよい、できる事を開拓していく人生もいいものだと田中氏を勇気づけます。その後、成り方も分からなかった同時通訳者という職を得るために、「顔が筋肉痛になった」ほど必死の発音と聞き取りのトレーニングに励みます。プロの同時通訳者となってからも、言葉と表現の学習に終わりはないと言います。曰く、「exciting」と「comunity」にピッタリ一致する日本語はいまだに見つからないと語っています。
本作には留学中の話はもちろん、英語学習についてヒントとなるお話が随所に登場します。しかし、私たちが想像していた様なスペシャルな学習方法は見受けられず、ごく単純な聞き取りの繰り返しや発音練習の繰り返しでした。また、モチベーションは他者から与えられるよりも、内から湧き出るような興味や短期目標(留学、テストスコア)の方が大きく人を動かすことも読み取れました。受験やテストを短期目標の一つとして意識し、内なるモチベーションを呼び起こして頑張っていきましょう。
2022年04月30日 17:11